動き出したアメリカ

米国の下院で、気候変動に関する重要な法案が可決されたという情報が、Twitterで一気に入ってきたので、この法案について少し調べてみました。枝廣淳子さんのメール・ニュースでも、この前進の意義の大きさについて触れられていました(今日のタイトルは、枝廣さんのニュースのタイトルを借用しました)。調べてみると、まだ完全に法案化されたわけではないようですが、排出権取引など、経済的手法による具体的な取り組みが、米国で始まる可能性が高まったことは確かなようです。
12月に開催されるコペンハーゲンでのCOP15に照準を合わせて、米国が変わったことをアピールしていきたいとAl Goreと述べていますし、今後、いろいろな動きがありそうです。

http://news.yahoo.com/s/ap/20090627/ap_on_go_co/us_climate_q_a

  • この法律の目的は何か?
    • 地球温暖化に関連するガスを削減すること
    • エネルギーのソースをシフトすること
      • 燃やす時に温室効果ガスを排出する化石燃料から、風力・太陽光・地熱といったクリーンなエネルギーへ
  • この法案が、それをどのように実現するのか?
    • 米国にとって、温室効果ガスの排出を初めて規制する法案
      • 発電所や石油精油所・工場のような、主な排出源に対する規制
    • この規制によって、汚染に対して、効果的に価格をつけることができる
      • 地球温暖化に貢献するような燃料・エネルギーを使い続けるような企業は、そのコストが上がり続ける
      • そういう企業に対して、クリーンな代替手段を求めさせるインセンティブを与える
  • それは、排出権取引(cap-and-trade)のことか?
    • そうだ、排出権取引導入の最初のステップは、大気中に排出されるガスの総量に制限(limit)を設けることだ
      • これが'cap'
    • capされた工場を持つ企業は、次に、排出可能な量を提示される(許可が与えられる・permit)
      • 一年間で排出可能な量、割当量(an annual pollution allowance)
    • この法案は、最初に大量の許可(permit)を、無料で与えるだろう
      • コスト的な負担を軽減させるために
      • しかし、排出量の総量が制限されているのだから、それだけでも価値はある
    • 充分な割り当てがない企業の場合
      • 自社の排出量をカバーできない割当量
      • 排出量を削減するための方法を探さなければならない
      • そのコストは大きくなるだろう
      • 他社からpermitを購入するという方法もある
      • 割当量よりも排出量が少なければ、そのpermitを他社に売却することができる
      • これが'trade'
    • 企業は、安いオプションを選択するもの
      • 排出量を削減するか、permitを購入するか
    • 第三の選択肢
      • 別の場所で排出削減する
      • 例えば、メタンを吸収するような農地、植林に投資する
      • この方法を、'offsets'という
  • このアイデアは、個々の工場が排出削減するかどうかに関係なく、全体的な汚染レベルを抑えようとするものなのか
    • 最初のうちは、その考え方で正しい
      • しかし、capは少なくなっていくだろう
      • 2050年までに83%の削減を達成するために
      • そのため、いずれは全ての企業は排出を削減しなければならなくなるだろう
    • ただ単に、「いつ」やるかの問題にすぎない
      • 例えば、技術的な問題があるため、石炭施設は排出削減をすぐに行なうことは難しい
      • その技術が利用可能になるのは、10-20年先のこと
      • だったら、それが実現可能になるまでの間は、offsetsを購入したり、他社から割当量を購入したりするだろう
  • 環境派の人たちは、このアプローチをサポートしているか?
    • ほとんどの人が賛同している
    • cap-and-tradeは成功事例がある手法
      • 1990年以来、酸性雨の要因である二酸化硫黄の分野で、米国はcap-and-tradeを導入している
    • 民主党は、法案を可決させるために、多くの妥協が必要になる
      • 一部の環境派は、このような妥協は法案を弱めると考える
      • 例えば、法案のスポンサーがcapを少なくした
      • オリジナルは2020年までに20%削減だったのが、17%になった
    • 研究者は、より多くの削減が世界的に必要になるだろうと主張している
  • このアプローチに誰が反対しているのか、それはなぜか?
    • 共和党、一部の農家、一部の環境派、permitが少ないと感じている石油産業、一部の穏便な民主党
      • これらの人々は、コストや失業者のことを心配している
      • 産業が温室効果ガスの制限を設けていない国へ移ったらどうなるのかという視点
    • この法案は、それを防ぐための条項を持っている
      • しかし、それが上手く機能するのかという疑問もある
    • 共和党は、エネルギー税を米国の家庭に課すような法案を検討している
      • 産業界が支出するのではなく、消費者の方にコストを転嫁したいからだ
      • この新しいルールによって、最終的には、各家庭で年間175ドルの追加的な支出が増えるだろう
  • この法案の元で、ルールに従わない企業はどうなるのか?
    • もし、制限値を超えてしまったら
      • 罰金を払わなければならなくなるだろう
      • 制限値を超えた排出量、単価はcap-and-tradeにおける価格の二倍
  • 潜在的にコストは消費者に転嫁されていく以外のことで、この法案が多くの米国人が日々の暮らしの中で影響を与えるか?
    • エネルギーの使い方や作り方が根本的に変わるだろう
      • 米国人が愛する、大きくて燃料をがぶ飲みする車や、安い燃料を求めるような時代が終わる
      • この法案によって、小さく燃費の良い車が道路を走り、煙突が風車やソーラーパネルに置き換わり、購入可能な家電が様変わりする
  • どのくらい早く、この変化に気づくことができるか?
    • いくつかのことについては、すぐに変化が現れるだろう
      • 例えば、ビルや機器のエネルギー効率を測定することは、インフラを変えることなく、新しい技術も必要とせずに、簡単に実現することができる
    • 他の変化は数十年単位で起こる
      • 規制を厳しくして、permitの価格を上げなければならないかもしれない
      • 例えば、風力やソーラーパネルをもっと設置することはできるが、それを都市へ運ぶためのラインが不足している
      • より燃費の良い車が市場に出たとしても、全員がすぐに買い換えるわけではなく、今の車を10年間使い続ける人もいるだろう
  • この法案が法律になるチャンスはあるのか?
    • オバマ政権や民主党は、この法案を年末に可決したいと考えている
    • 議会の大多数を民主党が占めている
      • しかし、可決させるのは簡単なことではない
      • 地方選出の穏便な民主党議員は、コストや法案の複雑さを心配している
      • 既に経済は悪い状態
      • 一部の共和党議員は、この法案をサポートするかもしれない
    • 上院で可決されることは期待できないと見るべきだろう
      • 可決させるためには、法案の一部を修正する必要があるかもしれない
  • そもそも、地球温暖化に取り組むことがなぜ重要なのか?
    • 科学者によれば、地球温暖化を放置しておけば、海面上昇を引き起こし、嵐や大気汚染が増える
      • これらの理由があるため、EPA(Environmental Protection Agency)は最近、6種類の温室効果ガスを発表した
    • 中国のような途上国は、排出規制には合意しないだろう

Energy Bill Clears the House, But Hurdles & Open Questions Remain – Gigaom

  • この法案が施行されたら、さらなる交渉が必要となるだろう
    • なぜなら、いくつかの重要な問題を置き去りにしているからだ
      • 例えば、どのようなプロジェクトがカーボン・オフセットの取引対象になるのか
    • 政府は、定期的に排出量を割り当てることになる
      • それは、変われと命令していることと同義
      • 多くの議論が発生するだろう
  • この法案のサポーター、Al Goreの見解
    • この法案は、全ての問題を解決するものではない
      • しかし、今日の可決は、今後の議論において弾みになる
      • 上院での議論、12月の世界的な交渉
    • 他のプラン(back-up plan)はない
    • 可決待ちになっている、これよりも重要な法案はない
  • Al Goreのブログ
  • 地元の議員に電話をかけろと呼びかけているAl Goreの映像

http://www.whitehouse.gov/blog/A-Historic-Energy-Bill/

  • オバマ大統領の会見・終盤より
    • 米国の海外への石油依存が、安全保障上の危険にさらしている
      • このことへの反論はない
    • 炭素汚染が地球を危機に晒しているかどうか
      • このことをへの議論はもはやない
    • 21世紀の職業や産業は、クリーン・再生可能エネルギーを中心にして生まれるかどうか
      • このことに対する疑問ももはやない
    • 唯一の疑問
      • どの国が、これらの職業や産業を作り出すだろうか?
      • アメリカ合衆国がそれになる、と私は答えたい
  • この会見の様子の映像