Smart Grid Interoperability・その3
- http://www.nist.gov/smartgrid/
- http://www.nist.gov/smartgrid/InterimSmartGridRoadmapNISTRestructure.pdf
第二章「Smart Grid Vision」の続きです。
「2.3 Smart Grid Challenges」では、現在のワンウェイな電気フローシステムから、ツーウェイでpeer-to-peerな電力システムへシフトするまでの間に発生するであろう問題点が述べられています。実務的なチャレンジとテクニカルなチャレンジに分かれています。さらに、政府の役割についても、この節で触れられています。
まずは、「Procedural Challenges」ということで、社会インフラとしてSmartGridを普及させようとした場合に解決すべき問題点は、以下のようなものになります。
- Broad Set of Stakeholders
- 米国内の全ての人やビジネスが影響を受ける
- SmartGrid普及に直接関わらないような人でも、理解を得られるような努力をすべき
- Complexity of the Smart Grid
- 幅広い分野が対象になっている
- Transition to Smart Grid
- 全てのGridをSmart化するには長い時間がかかる
- 既存の技術だけでなく、未来の技術も視野に入れたデザイン
- Ensuring Cyber Security of Systems
- 技術的なセキュリティだけでは不充分
- 政策やリスクマネジメント、トレーニングなども必要になってくる
- Consensus on Standards
- ステークホルダー間でのコンセンサスをベースにしたスタンダードづくり
- Development and Support of Standards
- スタンダード制定プロセスを公開し、多くの人を巻き込む
- これはチャレンジであり、時間もかかるが、多くのステークホルダーの意見を反映できる
- Research and Development
- 継続的な研究開発を必要とする
次の「Technical Challenges to Achieving the Smart Grid」では、技術的なチャレンジ項目について述べられています。
- Smart equipment
- 電力的な装置、家庭やビル、工場に設置される機器
- 将来の技術との互換性を保てるような設計
- Communication systems
- 新しいmediaが出てきたとしても、それに対応できるようにすべき
- Data management
- データを収集し、分析し、保管し、ユーザーにフィードバックするような技術
- Cyber security
- データや通信システム、サービスを信頼性の高いものにしなければならない
- Information/data privacy
- 非常に大きなシステムなのでプライバシー保護をしっかりと考えなければならない
- ステークホルダーが多いので、見られる情報は、権限のよって柔軟に変えられるようにすべき
- Software applications
- 低レイヤーのアルゴリズムから、大規模データの処理まで、様々なアプリケーションが必要となる
- SmartGrid内の全ての機能やノードのコアはソフトウェアだ
このように、チャレンジすべきことが多々あるSmartGridの普及を実現するために、米国政府は何をしようとしているのか。それによって、他にどんな波及効果を狙っているのか。そんなことが「Government drivers: Planning Assumptions」で語られています。例えば、「The American Recovery and Investment Act」には、より大きく、より賢いGridへのシフトを加速させるための110億ドルの投資が含まれているようです。米国エネルギー省によれば、電力発電のアイドル時間で、車や軽トラックに必要なエネルギーの70%を供給することができるそうですが、それが実現可能なのは、車の燃料チャージをoff- peakの時間帯に行なった場合ということなので、やはり、そのあたりの需給調節が可能な仕組みが必要になってくると考えられます。
SmartGridを普及させることによる波及効果、というよりかは、これらを実現するための手段としてSmartGridを普及させる、という方が正しい見方なのかもしれませんが、それらを下記にピックアップしておきます。
- 石油輸入の半分に相当するエネルギーを代替エネルギーに置き換える
- 米国の二酸化炭素排出量を削減する
- 都市部の大気汚染を緩和する
- "clean energy economy"の分野で新しい仕事を生み出す
- 米国の国際競争力を高める
- 次世代のエネルギー技術に関するイノベーションを促進させる
- 次世代の車やトラック、代替燃料を普及させることにより、米国の石油依存を打破する
- 国内の再生可能エネルギーなどを広めることで、米国のエネルギー供給を強化する
- エネルギー効率が高まり、運輸・電気・産業・ビル・農業などの分野でエネルギーコストが下がる
- これらのことを、最低のコストで最高の利益を得ながら実現するための、様々なプログラムが発足する
こういった経済的な効果、安全保障的な効果は、『グリーン革命』でも多く述べられていました。不確実性が高い将来の危機を避けようとか、慈善的な活動を通じて地球を守ろうとか、そういうことだけではなく、具体的なメリットを身近に感じられた方が、人も経済もダイナミックに動けるのかもしれません。
次節以降では、理想像に近づくためには、どんなスタンダードが必要か、ということについて述べられていますので、次回以降、取り組んでみたいと思います。