Smart Grid Interoperability・その4

第二章「Smart Grid Vision」の最後です。
「2.4 The Initial Project Application Areas」は、SmartGridを既存の仕組みと融合しながら普及させていく過程の、初期段階でやるべきことが書かれています。ここは短い節で、詳しいことは第四章に掲載されているので、ここでは飛ばしました。
「2.5 The Landscape of the Smart Grid Roadmap」では、今後、どういう基準や制度が必要になってくるのか、ということについて述べられています。
まずは、「Requirements Must Be Mature」ということで、SmartGridを構成する要素に対する要求事項を熟考せよとのこのとです。そもそも「Requirements」とは何かについて、SmartGridが何で、何をするものかを定義したもので、それらは、SmartGridの基本概念(foundational)であると、ここでは表現されています。ドメイン・エキスパートによってしっかりと策定されるべきで、ドキュメント化も成されなければならないとも述べられています。
次は、「Well-Developed Standards Are in Place」。相互連携が可能なシステムやコンポーネントを実現するためには、スタンダードが非常に重要だとのことです。スタンダードがあることで、多くの企業が思い切って製品開発に取り組めるので、イノベーションを引き起こす可能性があるとも述べられています。
「Mature Architectures Guide Development」、SmartGridのアーキテクチャーそのものも熟考されるべきだという指摘です。システムやコンポーネントがどのように影響し合うかを定義したものがアーキテクチャーですが、これがあることによって、テクニカルな側面と、非テクニカルな側面を統合して考えることができるとも書かれています。例えば、しっかりと定義されたインターフェイスモデリングツールを使ったドキュメント化が必要になってくるそうです。
加えて、「Support Infrastructure must be Ready」、全ての要求を満たし、堅牢なアーキテクチャーを備えたコンポーネントがあったとしても、インフラがなければ何もできないので、それらのサポートを受けられるような体制づくりが大切だとのことです。物理的なインフラだけでなく、経済・社会的なインフラについても考えなければならないと述べられています。
SmartGridは「a network of networks」なので、各コンポーネント(ドメイン)は、他のコンポーネント(ドメイン)と連携できる必要があります。連携手段は、ここでは「information network」と書かれていますが、これはエネルギーそのものの連携、というよりかは、情報・データの連携といった側面を主張しているからだと思います。情報・データのネットワークに反応して、エネルギーのネットワークが双方向に効率よく動く、ということでしょう。
第二章の最後「2.6 Smart Grid Interoperability Standards Governance」では、SmartGridのスタンダード策定における現時点での課題を三つ挙げています。

  • よりフォーマルで国家ドリブンなガバナンス構造が必要
    • ステークホルダーが多く、それぞれが違う考えを持ち、複雑なスタンダードになる可能性があるため
  • 既に動いている仕組みのことを考えた上で、スタンダードを策定すべき
    • SmartGridの普及は既に進行中であり、ある箇所では既に運用されている
  • 相互連携に関する議論や定義は、外部システムとの連携に関するスタンダードにフォーカスすべき
    • intra-systemよりもinter-system

これで第二章は終わりです。この章では、早い段階で国や業界で規格を合わせ、そうすることによって普及速度を上げ、イノベーションが生まれる可能性を高める、という考え方に触れることができたと思っています。多くのステークホルダーがいるなかで、こういった未知の物事についての議論が行なわれているわけですが、方向性を定めつつ、詳細までは厳格に決めず、イノベーションが起こる余地についても考慮しているところなどは、個々人の小さなレベルでも応用可能なのではないかと思っているので、参考にしていきたいと思っています。
次の第三章では、SmartGridを構成する各アクターについて述べられています。この章も面白いので、少しずつまとめていくつもりです。