スマートグリッド・コンファレンス(1)

昨日、インプレスR&D社主催による「スマートグリッド・コンファレンス」に行ってきました。何回かに分けて、印象に残った点を書き残していこうと思います。今回は、経済産業省伊藤慎介氏による講演で出てきた話題を取り上げます。何かのドラマに出てきそうな熱意あふれる伊藤氏の人柄が好印象でした。
講演が始まる直前、以下のような疑問が沸き起こりました。

  • 日本のグリッドが既にスマートであるのなら、わざわざ今の米国の流れに乗る必要はないのでは?
  • 確かに、電力効率が上がるなどのメリットはあるが、社会全体としての優先度は高いのか?

そんな疑問を持ちながら、伊藤氏の講演を聞いていたのですが、講演を聞きながら、これは日本も積極的に取り組んでいかないといけないトピックなのではと感じるに至りました。

  • 標準化
    • 日本の現在のお家芸である車や家電が、スマートグリッドの中においては単なる「端末」に成り下がる
    • 重要なのは、それらがスマートになったグリッドに接続できること
    • そこにつなげないようでは、いくら端末が優れていても、世界の消費者には受け入れられない
  • プラットフォーム
    • コアなプラットフォームに何でも接続できるような仕組み(インテル型プラットフォーム)
    • 複数の部品を組み合わせて完成品を作る
    • この仕組みによって、完成品の価格が下がり、市場が大きく拡大した
    • プラットフォームを提供する企業は、ライセンス収入によって膨大な利益を獲得した
    • 日本のような垂直統合の仕組みだと、完成品の価格が高くなってしまうため勝負できなくなる
    • 誰かが作ったプラットフォームの上で闘ったとしても、大きな利益を獲得することはできない
  • エネルギー・インターネット
    • 街全体が「システム」になる
    • この「システム」に接続できなければ、インターネットにつなげないパソコンのように、役に立たないものになってしまう
    • この「システム」のコアとなるプラットフォームを海外勢に握られたらどうなるか?
    • その上でいくら奮闘しても、利益はプラットフォームを提供する海外勢のところに流れてしまうのではないか?
    • 日本の製造業が稼げなくなったら、日本は自国の食糧やエネルギーを賄うこともできなくなってしまうのではないか?

池田信夫氏のこちらの記事を合わせて読むと面白いかもしれません。個人的には、「プラットフォーム」を握ることの重要性ということをこれまで特段に意識したことがなかったので、今回のお話はとても刺激になりました。また、まずは「標準」を作ってしまおうとする諸外国の動きの理由についても、少し理解を深めることができました。自分の身の回りにあるモノ・サービスを、「プラットフォーム」という視点で分析するクセをつけていこうと思います。


■■追記(2009/08/05)
この講演に関する記事へのリンクを貼っておきます。
http://kankyomedia.jp/news/20090803_3595.html