スマートグリッド勉強会に向けて
スマートグリッド勉強会の第二回目が来週あり、それに向けて、「The Smart Grid in 2010」というレポートの第二章を読んできました。当初は第二章全てを読んでしまいたいと思っていたのですが、見積りが甘く、とても間に合いそうにないので、AMIとDRだけに留めることにしました。スマートグリッドを構成する、この二つの分野における、主要なプレーヤーや具体事例はどんなものなのか、こちらの記事も参考にしながら、レポートに登場してきた企業を調べるなどして理解を深めていきたいと思っています。
これに加えて、勉強会に向けて、先ほど見つけた下記の記事を読み進めてみたいと思っています。
Smart Grid 2.0: ‘The Soft Grid’ | Greentech Media
この記事では、「The Soft Grid」という言葉が提唱されています。「The Era of The Soft Grid」のような言葉も使っていて、若干誇張しすぎではないのか、と感じる点もありましたが、「The Smart Grid in 2010」のレポートに言及しつつ、これから個々人に求められるスキルなどにも触れられていて、とても面白い文章だなと思いました。なので、次回はこの文章をまとめてみたいと思います。
The Smart Grid in 2010・その5
今回はDemand Responseについてです。このDemand Responseを日本語でどう表現すべきなのか、未だによくわからないのですが、電力網全体の電力需要が高い時に、その情報を電力網全体に通知して、末端のデバイスがそれに反応し、電力需要を抑えて、供給キャパシティがオーバーしてしまうのを防ぐための仕組み、だと認識しています。電力の需給や価格の変化を「見える化」し、さらにはデバイスそのものが自動的に反応する。こういうことに取り組んでいる企業も、このレポートの中には登場し、とても良い勉強になりました。
http://www.gtmresearch.com/report/smart-grid-in-2010
2.2 Demand Response/Demand Side Management
2.2.1 Introduction
- Demand Response(以下、DR)のコンセプト
- ユーティリティがエンドユーザーに対して、エネルギーの消費量を減らすためのインセンティブを与える
- criticalな時(電力供給が危険な状態の時?)
- ピーク時("peak" times)
- オン・デマンドで
- いつ・どのようにエンドユーザーの電力負荷を減らすかは、ユーティリティとの契約で決まる
- ユーティリティがエンドユーザーに対して、エネルギーの消費量を減らすためのインセンティブを与える
- 北米地域の現状
- エネルギーを大量に消費する商業・工業分野でDRが使われている
- スマートグリッドの通信・技術を活かすためには、家庭分野でもDRを普及させていく必要がある
- DRの位置づけ
- マーケットが本格的に関わる、初めてのスマートグリッドのアプリケーションとなるだろう
- the New York Timesは"a gold mine"と称している
- 次の5年で4倍の規模に膨らむと予測されている
- 40百万のスマートメーターが全米に配置されれば、それはDRプログラムが受け入れられる素地になる
- DRは、win-winなソリューション
- ユーティリティとエンドユーザーの双方において
- ピーク時に備えて発電所を建設することに比べて、DRは、安くて、素早く、クリーンで、信頼性の高いソリューションを提供する
- コストを抑えられるというポイントは、ユーティリティ・エンドユーザー双方にとって、採用を決定するキードライバーとなる
- マーケットが本格的に関わる、初めてのスマートグリッドのアプリケーションとなるだろう
- PG&Eの事例
- DRの効果予測
- ピーク時の需要を5%減らすことができれば・・・
- ピーク時にまれに使われる約625箇所の発電所やそれに付随するインフラが必要なくなる
- これは、年間30億ドルのコスト節約に相当する
- ピーク時の需要を5%減らすことができれば・・・
2.2.2 Recent Background
- DRを市場に組み込む仕組みづくり
- 2006年、FERCやNARUCといった機関が、これらへの取り組みを始めた
- これによって、DRソリューションは、公共のユーティリティからの注目を集めるようになった
- 2007年、Thomas Weisel Partnersから発行されたレポート
- この5年から10年の間で、DRは年間80億ドルの市場となるだろう
- 2008年の時点で、既に15億ドルの市場になっている
- 米国の8%のエネルギー消費者が、何らかのDRプログラムに参加している
- これによって、41,000MWに近く節電でき、これはピーク時の5.8%に相当する
- 2006年、FERCやNARUCといった機関が、これらへの取り組みを始めた
2.2.3 Demand Response vs. Natural Gas at Peak
2.2.4 Virtual Peak Power: A Growing Market
- "virtual peak power"をユーティリティに提供するサードパーティの事業者
- DRに対するニーズの高まりによって、この大きな市場が作られた
- エンドユーザーのサーモスタットやグリッドに反応するデバイスと連携
- 電力がピークの時間帯に、それらの電力を集積する
- 米国における主要なプレーヤー
- Comverge(http://www.comverge.com/)
- EnerNoc(http://www.enernoc.com/)
2.2.5 Continuing Challenges
- 解決すべき問題点
- 時間帯ベースの電力料金体系
- メーターのデータにアクセスできる仕組み
- インフラへの投資、景気減退中でもそれができるか
The Smart Grid in 2010・その4
AMIの部分は今回で最後になります。AMIの基盤となる通信手法として、現在リストアップされている技術の中から、以下の三つがピックアップされていたので、それを今回は読みました。Wikipediaにも詳細な説明があり、WiMaxについては日本でも近頃よく登場するようになってきたので、近いうちに読んでみようと思っています。
http://www.gtmresearch.com/report/smart-grid-in-2010
2.1 Advanced Metering Infrastructure (AMI)
2.1.6 AMI Communication Networks -- Competition Heats Up(続き)
- RF Mesh Networks
- Radio Frequency mesh networks
- 北米においては、AMIの通信分野における主要なソリューション
- マルチ・ホップなメッシュ技術
- 個々のノードが、その他のノードと通信できる
- 信頼性があり、冗長でもある
- なぜ、北米では有力なのか?
- スケールするのか簡単だから
- 手早くインストールすることができ、面倒な手続きを必要としない
- self-configuring
- 自律的なシステム
- 全てのデバイスは、自身のオリジナルなポジションを発信し、ネットワークから自動的に認識されることができる
- インターネットのように、一つの通信リンクに障害が発生しても、他の通信リンクへ自動的に切り替わり、メッセージは正常に送受信される
- 批判者の主張
- PLC(power line carrier)との違い
- PLCの場合、文字通り、メッセージ(signal)は電線を通る
- RF mesh technologyの場合、メッセージ(signal)は、無線で各コレクション・ポイント間を移動する
- メーターがハブとしての役割を果たし、メッセージはメーターをリレーしながら目的地へ向かう
- 3G Networks
- 2009年3月、携帯電話用(cellular networks)ネットワークを使って、家庭用電気メーターとユーティリティをつなぐサービスがアナウンスされた
- アドバンテージ
- コストを削減することができる(ネットワークのために何かを建設する必要はない)
- 不確実性(既にテレコムの分野で活用されているし、これからも積極的に投資されていくだろう)
- 批判者の主張
- これらのネットワークは、machine-to-machineの分野に特化されていない
- もし、大手テレコムがこれらのビジネスに参入してきたら、どんな手段を使ってでも勝ちにくるだろう
- WiMax
- 長距離(long range)で、高帯域幅(high-bandwidth)な無線(wireless)のスタンダード
- 現在主流である、ライセンスされていない900-MHzのスペクトルとは異なる(これは、RF mesh networkingでの通信でよく使われる)
- WiMaxは、ライセンスされているスペクトルを使う(安全性・信頼性が高い)
- 待ち時間が短い(lower latency)
- RF mesh networksと比べて
- エンドユーザーのアクションに応じて、データがリアルタイムに通信されなければならない
- 待ち時間は、未来のスマートグリッドにとって非常に重要な要素となる
- 問題点
- ライセンスされているネットワークなので、その分、コストが発生する
- まだ充分に普及していない
- 長距離(long range)で、高帯域幅(high-bandwidth)な無線(wireless)のスタンダード
The Smart Grid in 2010・その3
前回に引き続き、AMIの部分を読み進めました。今回は、AMIで使うデータの通信手法として、現在どんなものが使われていて、どんなものが可能性として挙げられているのか、それぞれのメリット・デメリットは何なのか、といったことについて触れられています。この節の最後に、代表的な通信手法(RF Mesh Networks/3G Networks/WiMax)の少し細かい説明が掲載されていましたので、次回はその部分を読み進めていこうと思っています。
http://www.gtmresearch.com/report/smart-grid-in-2010
2.1 Advanced Metering Infrastructure (AMI)
2.1.4 Smart Meter: The Gateway to the Home Area Network
2.1.5 AMI Networking and Communications
- AMIのネットワーク
- 通信手法の具体例
- 以下のような指標を用いて、それぞれの手法を評価する
- Latency(待ち時間)
- Reliability(信頼性)
- Cost(コスト)
- Maturity(成熟度)
- Maintenance(メンテナンス性)
- Resiliency(弾力性、回復力)
- 上記指標を用いた通信手法の評価結果が、このレポートの51ページに記載されている
- 以下のような指標を用いて、それぞれの手法を評価する
2.1.6 AMI Communication Networks -- Competition Heats Up
- AMIの通信手法の標準化
- 現在、議論されている
- ユーティリティの視点
- 可能であれば、多くのアプリケーションを既存のネットワークの上で動かせるようにしたい
- しかし、信頼性やスケーラビリティ、コストという課題がある
- さらに、帯域や待ち時間にも注意を払う必要がある
- そうしなけらば、demand responseのような先進的なアプリケーションは導入できない
- (they) will want to ensure that their network is up to the task.
- 新しいアプリケーションが一般的になってくれば、より多くのデータが流れることになる
- それはつまり、より多くのデータ変換(be transported)が必要になることを意味する
- ユーティリティは、現在のアプリケーションだけでなく、将来登場するであろうアプリケーションにも備えておく必要がある
- 地域ごとの特性
- 北米では、radio frequency(RF) mesh networksが一般的
- 欧州では、broadband-over-powerlineが一般的
- 現在、Public Cell Phone Wireless Carriers(3G Networks)やWiMaxへの関心が高まっている
The Smart Grid in 2010・その2
このレポートの第二章の全体像については前回のエントリーで触れましたが、その最初に登場するのがAMIです。最初に登場して、しかも第二章の中でも多くのページ数を費やしていますので、スマートグリッドを構成する要素としての重要度は高い、と考えられているのでしょう。文章の中にも「The First Wave of Smart Grid」という表現がありました。AMIは、6つのパートに分かれて説明されていますが、そのうちに最初の3パートを読んだので、以下にメモを書き残しておきます。
http://www.gtmresearch.com/report/smart-grid-in-2010
2.1 Advanced Metering Infrastructure (AMI)
2.1.1 Introduction
- AMIとは?
- Advanced Metering Infrastructure
- エネルギー使用量(energy usage)を、集め(collect)、計測し(measure)、分析する(analyze)システム
- スマートメーターとユーティリティの制御システムとの間の、双方向ネットワークを通じて可視化されたデータが使われる
- 何ができるようになるのか?
- "you can't fix what you can not measure"
- AMIを構成する二つの要素
- スマートメーターそのもの
- 古くて通信できないメーターから置き換えられる
- 通信ネットワーク
- メーターが生成したデータを運ぶために必要
- スマートメーターそのもの
- AMIのレイヤー構成
- アプリケーション・レイヤー
- データの収集、監視、制御を行ない、電力網全体を効率的に管理する
- データの分析も行なう
- つまり、数多くのエンドポイントから送られるデータを、「アクション可能な知見(actionable intelligence)」へ変換する
- 変換されたデータは、送電網のオペレーションを、効率化するのに使われる
- トランスポート・レイヤー
- ユーティリティとエンドユーザー間におけるデータの送受信を管理する
- 様々なネットワークを通じて送受信が行なわれる
- この部分のインフラが整うことで、他の先進的なアプリケーションも、様々な制御ができるようになる(参入可能になる)
- そのため、AMIは大きな注目を集めている
- アプリケーション・レイヤー
- AMIというインフラが整備されることで登場するであろう新しいアプリケーション
- Remote meter reading for billing
- 請求書作成のためにメーターを遠隔から読み取る
- Remote connect/disconnect capabilities
- 遠隔から接続可否をコントロールする能力
- Outage detection and management
- 停電の検出・管理
- Tamper/theft detection
- 不正な電力利用の感知
- Short interval energy readings(which serve as the basis for maket-based energy rates)
- 短い間隔でのエネルギー使用量情報の取得
- Distributed generation monitoring and management
- 分散発電の監視・管理
- demand-response
- AMIの中において、最もエキサイティングなアプリケーションの一つ
- ユーティリティに、配電網のエンドポイントのスイッチのオン・オフをリアルタイムに調節する能力を与える
- ピーク時の電力需要を抑えることが目的
- Remote meter reading for billing
2.1.2 Challenges/Opportunities
- AMIを普及させるだけでは、多くの革新的なシステム改善は望めない
- AMIの批判者は、この点を指摘する
- スマートメーター自体は、エネルギー消費量を削減することができない
- しかし、一般的な消費者や多くのユーティリティは、以下のことを認識しなければならない
- AMIを上手く普及させることは、AMIの明確なメリットを享受できるだけでなく、新しいエネルギーの配電・管理システムのプラットフォームを構築できるということでもある
- AMIの批判者は、この点を指摘する
- ユーティリティの役割
- スマートグリッドのメリットを幅広く享受するためには・・・
- ユーティリティがAMIの力を最大限に活用しなければならない
- それをしなければ、多くの機会が失われるだろう
- 将来のシステム統合や置き換えのコストも大きくなってしまうだろう
- 標準化されたネットワークの活用
- 資本(初期投資)と運用、双方のコストが劇的に下がる
- スマートグリッドのメリットを幅広く享受するためには・・・
- どんな可能性があるか?
- 分散発電を量産化するための土台になる
- HANや未来のアプリケーションのゲートウェイとして振る舞う
- エネルギー取引市場への可能性を開く(電力価格に応じて、電力の購入可否を決められる)
2.1.3 Smart Meters: The First Wave of Smart Grid
The Smart Grid in 2010・その1
スマートグリッド勉強会経由で知った「The Smart Grid in 2010」というレポートの一部を読み進めています。パラパラと読んでみた限りだと、第二章が具体的な話題が豊富で面白そうだと感じたので、この部分から始めました。このレポートの概要については、こちらの方で紹介されています。
http://wiredvision.jp/blog/kanellos/200907/200907210211.html
http://www.stylishidea.com/archives/1441
第二章は、以下のような構成になっています。
- 2 SMART GRID APPLICATIONS AND TECHNOLOGIES
- 2.1 Advanced Metering Infrastructure (AMI)
- 2.2 Demand Response/Demand Side Management
- 2.3 Grid Optimization/Distribution Automation
- 2.4 Integration of Renewable Energy and Distributed Generation Sources
- 2.5 Energy Storage
- 2.6 PHEV Smart Charging and V2G
- 2.7 Advanced Utility Controls Systems
- 2.8 Smart Homes and Home Area Networks
全てをやるかはわかりませんが、AMIやDemand Responseは内容も充実していて勉強になりそうなので、じっくり読んでみようと思います。流行の電気自動車やストレージに関する言及もあるので、そちらの方も読んでみたいところです。あと、「Advanced Utility Controls Systems」はEMSと関わりがありそうな気配があるので、これも読んでみるつもりです。なので、結局、全部に目を通してしまうかもしれません。
Unlocking Energy Efficiency in the U.S. Economy
下記のサイトに、マッキンゼーが発表したレポートが紹介されていました。内容は、米国のエネルギー効率化についてで、今回はExecutive Summaryしか読めませんでしたが、こういった企業が発表する資料に触れるのは初めてだったので、とても良い刺激になりました。
McKinsey: Invest $520B in Energy Efficiency, Save $1.2T | Greentech Media
http://www.theenergycollective.com/TheEnergyCollective/45728
実際のレポートはこちらです。
Page not found | McKinsey & Company
読んだのは少し前だったのですが、上手くまとめられずに更新が滞ってしまいました。100ページを超えるレポートのサマリー資料を、自分の力量でさらにまとめようとしていたことに無理があったのかもしれません。というわけで、今回も箇条書きに留めておきます。
- 今の段階では、エネルギーを効率化するための投資からリターンを得ることはできない
- 二つの課題がある
- リターンを得るための機会はどれほどあるのか
- その潜在性を顕在化するために必要なステップとは何なのか
- エネルギー効率化によって、低コストで大量のエネルギーがアメリカ経済に注ぎ込まれる
- しかし、包括的で革新的なアプローチを取ることが前提だ
- このレポートでは、下記のことを説明する
- エネルギー効率化によるメリット
- なぜエネルギー政策が国家の優先的課題なのか
- エネルギー効率化を阻む障害は何なのか
- その障害を取り払うための戦略はあるのか
- 想定される5つの戦略について
今回のレポートを読んでいて、話の内容そのものよりも、
- 話の流れが構造化されている
- ポートフォリオをはじめとする図・グラフが効果的に使われている
- 英語の表現方法が明確でわかりやすい
といったことの方が印象に残りました。英語については、理解できない部分も多々ありましたが、体感的に「明確でわかりやすい」と感じました。この部分は、あのフレームワークを使って説明をしているんだな、といったようなことまで意識しながら読めると、なお良いとも思いました。
マッキンゼーのサイトを覗いてみたら、他にもいろいろなコンテンツがあるのを発見しました。こういうところにも情報があるんだ、ということを知ることができたのも、今回、このレポートに触れて良かったと思えている要因の一つです。